- 母子生活支援施設(母子寮)ってどんなとこ?
- 1日の流れとか入居条件ってどうなってるの?
あや
母子生活支援施設は、母子の保護や自立促進を目的とした施設です。
離婚後、結婚中に住んでいた家に住み続けたり実家に帰ったりできず、かといって賃貸住宅を借りる余裕もなく母子生活支援施設に入所するシングルマザーは少なくありません。
この記事では、母子生活支援施設への入所を検討している人が知りたい情報を解説します。
- 母子生活支援施設のことが詳しく知りたい人
- 母子生活支援施設(母子寮)への入所を考えている人
- 離婚後に住む場所がなく悩んでいる人
目次
母子生活支援施設とは
母子生活支援施設とは、母子家庭のシングルマザーなど一定の要件を満たす女性と子供が入所できる施設です。
主管は、厚生労働省です。
以前は、「母子寮」という名称で、「母子の保護」を主な目的としていました。
しかし、1998年の児童福祉法改正で名称が「母子生活支援施設」に改められました。
目的も「保護と自立促進のための生活支援」に変更されています。
母子生活支援施設の法的根拠
母子生活支援施設は、児童福祉法第38条に基づいて設置されています。
母子生活支援施設は、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。
引用:児童福祉法第38条
母子生活支援施設の目的
母子生活支援施設の目的は、3つあります。
- 入所対象者の保護
- 入所対象者の自立を促進するための生活支援
- 施設退所者の相談や援助
母子寮の頃から入所中の生活は保障されていましたが、退所後のサポートは不十分でした。
- 退所後の生活を軌道に乗せられない
- 子供の養育が困難になる
こうした女性が後を絶たず、社会問題にもなりました。
そのため、母子の保護を土台にしながら次のような目的が付け加えられていきます。
- 1998年の児童福祉法改正では「自立促進のための生活支援」
- 2004年の同法改正では「施設退所者の支援」
つまり、現在の母子生活支援施設は、母子を一時的に保護するだけではないのです。
- 退所後に自立した生活を送れるよう、就労支援や子供の教育に関する助言などを行う
- 退所後も、必要に応じて相談や援助を受けつけ、母子の生活を総合的に支援する
この2つの目的もまた、母子生活支援施設の大きな目的となっています。
母子生活支援施設の施設数、定員、入居世帯数
2017年10月時点における母子生活支援施設の施設数、定員、入居世帯数は、以下のとおりです。
母子生活支援施設の状況 | |
施設数 | 227ヶ所 |
定員 | 4,938世帯 |
入居者数 | 8,100人以上 |
参考:平成 29 年社会福祉施設等調査の概況|厚生労働省
母子生活支援施設の職員
母子生活支援施設は、配置しなければならない職員が規定されています。
母子生活支援施設の職員 | |
職業 | 人数 |
施設長 | 1人 |
母子支援員 | ・9世帯以下:1人
・10~19世帯:2人 ・20世帯以上:3人 |
少年指導員 | ・19世帯以下:1人
・20世帯以上:2人 |
保育士 | 保育施設がある場合:30人につき1人
(1施設に1人配置することができる) |
嘱託医 | 1人 |
調理員 | 1人 |
母子生活支援施設の入所対象と入所理由
母子生活支援施設の入所対象と入所理由について、確認していきます。
母子生活支援施設の入所対象
入所対象となるのは、原則として以下の条件に当てはまる母子です。
18歳未満の子供と、保護者の女性
一定の事情がある場合、子供が20歳に達するまで入所を継続できます。
「母子生活」支援施設という名称のとおり、母子が一緒に入所することが前提の施設で、母または子供だけの入所はできません。
入所対象者(入寮条件を満たす人)の具体例は、次のとおりです。
- 離婚後の生活を軌道に乗せられないシングルマザーと子供
- 18歳未満の子供の養育が困難になったシングルマザーと子供
- 子連れ別居したが、夫の反対で離婚できず、日々の生活や子供の養育が困難になった女性
母子生活支援施設の入所理由
母子生活支援施設への主な入所理由は、次のとおりです。
- 職業上の理由
- 入居前の家庭環境
- 夫などからのDV(家庭内暴力)
- 住宅の事情(借金から逃れるために)
- 児童虐待(身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、ネグレクト)
- 母親の心身の不調(病気、アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存など)
- 経済的な事情(幼い子供を抱えての離婚や、未婚で出産して就労できないなど)
現在は、「夫などからのDV(家庭内暴力)から逃れるため」という理由が、半数以上を占めています。
また、精神障害や知的障害のある母親や、発達障害などの障害のある子供の入所が増加傾向にあります。
以前は、母子を保護するという側面が強かったので、住宅事情・経済的事情・夫の不倫などの理由でも入所が認められていました。
しかし、自立促進などの目的が加わった現在は減少しています。
母子生活支援施設で受けられるサポート
母子生活支援施設で受けられるサポート(業務内容)は大きく2つ。
- 母親の支援
- 子供の支援
母親のサポート
母親に対するサポートの内容は、次のとおりです。
- 子育ての不安や悩みの相談を受けて助言をする
- 母親の代わりに子供を保育所や学校などに送迎する
- 職場などにおける対人関係の不安や悩みについて助言する
- 病気になった母親の看病や、闘病期間中の子供の保育を行う
- 生活習慣の確立と維持を目的として、生活スキルの向上支援を行う
いずれも、退所後の生活を軌道に乗せるのに必要なスキルの獲得や、身体的・精神的安定やストレスの緩和を目的としています。
子供のサポート
母子生活支援施設では、母親だけでなく子供のサポートも行っています。
子供に対するサポートの内容は、次のとおりです。
- 母親が体調不良のときの保育
- 宿題や翌日の準備などの支援を行う
- 保育所に入所できない子供(待機児童)の保育
- 子供の進路に関する相談を受けつけ、助言を与える
- 早朝、夜間、休日など母親が対応できない時間帯の保育
- 子供が病気やケガをして保育園に預けられない場合の保育
- 母親との関係についての不安や悩みを受けつけ、助言を与える
- 学校生活(人間関係や勉強など)に関する相談を受けつけ、助言を与える
- 施設内で職員やボランティア、実習生などの大人と関わる機会を持たせる
- レクリエーションやグループワークなどに参加させ、協調性や社会性を育ませる
本来は、家庭において親が行う教育や助言・指導を、子供支援員を中心とする職員が行います。
緊急避難(夫などからのDV(家庭内暴力))で入所した母子に対する支援
DV(家庭内暴力)を理由として入所した母子に対しては、次のような支援が行われます。
- 24時間体制で緊急入所を受けつける
- DV防止法に基づく一時保護委託依頼を受け、母子の受け入れと生活環境を整える
- 警察署、福祉事務所、配偶者暴力支援センターなどの関係機関との連絡態勢を整える
- 情報管理を徹底し、夫などのDV加害者に母子の入所を知られないよう配慮する
- 母子に対するカウンセリングなどを行う
DVを理由とする入所は、一時保護委託が多くなっています。
ただし、住居の当てがない場合などは継続入所となることもあります。
あや
母子生活支援施設の入所方法と入寮条件
母子生活支援施設に入寮したい場合の相談先(申請先)は2つあります。
住んでいる都道府県または市区町村の福祉事務所
相談すると、担当職員から母子の生活状況を聴取されます。
聞かれる内容は次のとおり。
- 就労の有無
- 健康状態
- 子供の状態
- 母子の関係性
- 元夫との関係など
その上で、母子の生活状況を踏まえて対応が検討され、相談者にとって最も適切だと判断したサービスや支援機関などを紹介されます。
母子生活支援施設への入所が適当だと判断されれば、利用申込みができます。
申込みが受理されると、福祉事務所が利用の可否について必要な調査を行い、結果を申請者に通知します。
入所申請に必要な書類や資料、審査にかかる期間などは、地域によって異なります。
相談したときに確認しておきましょう。
あや
母子生活支援施設の入所(入寮)条件
実は、具体的な入所(入寮)条件は公表されていません。
入所理由を踏まえると次のような条件があると考えられます。
- DV(家庭内暴力)
- 職業上の理由
- 家庭環境児童虐待
- 母親の心身の不調
- 住宅の事情
詳細な入所(入寮)条件は地域によって異なります。
住んでいる地域の市区町村役場か福祉事務所に確認しておきましょう。
あや
母子生活支援施設の費用
母子生活支援施設の費用は、生活保護世帯や住民税非課税世帯か否かによって異なります。
世帯の状況 | 費用 |
生活保護世帯 | 無料 |
住民税非課税世帯 | 無料 |
それ以外の世帯 | 所得の世帯に応じて負担 |
居室内の水道光熱費は、世帯の状況に関わらず実費を負担する必要があります。
あや
母子生活支援施設での一日の流れ
母子生活支援施設では、世帯ごとに独立した居室が提供されます。
そのため、入寮している家族がそれぞれ自宅に近い生活を送れます。
また、レクリエーションなどを行う共用スペースや相談室などがあり、施設のルールに従って利用できます。
一日の流れは施設ごとに異なりますが、一般的には次のような流れとなります。
- 7:00~:起床・朝食・登園・登校・通勤
- 14:00~:幼稚園児・小学生が帰宅
- 16:00~:母親・高校生が帰宅
- 19:00~:夕食・入浴・就寝
起床や就寝の時間については、入所(入寮)家庭が自由に決められます。
一方で、登園や登校・帰宅時間、共用スペースや相談室などの利用時間は、施設ごとに決められたルールを守る必要があります。
入所期間
3年以内に退所する母子が半数近くを占めています。
しかし、10年以上も施設で生活する母子もいます。
施設によっては、入所期間の原則を定めているところもあります。
原則の期間を超えて入所を希望する場合は、施設長に入所継続を希望する理由や自立目標を伝え、判断を待つことになります。
母子生活支援施設の一覧
住んでいる地域の母子生活支援施設の一覧は、各地域の社会福祉協議会が作成しています。
社会福祉協議会のウェブサイト上に母子生活支援施設の一覧を公表している地域もあれば、窓口での閲覧や交付のみの地域もあります。
「住んでいる地域の社会福祉協議会 母子生活支援施設 一覧」などでネット検索して確認しましょう。
ネット上に公表されていなければ、地域の社会福祉協議会の窓口で確認してください。
母子家庭のシングルマザーが離婚後に住む場所
母子生活支援施設は、緊急避難的に入所する場所なので、いずれは自力で住まいを見つけて自立する必要があります。
母子家庭のシングルマザーが選択できる住まいは主に4つ。
- 婚姻中の自宅
- 賃貸住宅
- 公営住宅
- 実家など
いずれもメリットとデメリットがあります。
母子生活支援施設入所中に、相談員と十分に話し合って選びましょう。
母子生活支援施設のまとめ
母子生活支援施設は、離婚前後に住む場所がない場合などに入居できる施設です。
住む場所が確保でき、就労支援や子供の教育に関する相談もできるありがたい場所ですが、あくまで仮住まいに過ぎません。
また、母子寮から母子生活支援施設に変わった後は、母子家庭のシングルマザーが入居できないケースが増えています。
事前に市区町村役場や福祉事務所に相談し、入居できるかどうか、費用や期間などを確認しておきましょう。