- 態度の悪い調停委員への苦情ってどこに言えば良いの?
- 調停委員の変更ってできるの?
その疑問、記事を読めば5分で解消します。
あや
離婚調停は男女1人ずつの調停委員が進行します。
「裁判所の人なんだからちゃんとやってくれるだろう」と思うかもしれませんが、実は問題のある調停委員が少なからずいます。
セクハラまがいの発言をしたり、調停中に居眠りしたり…
信じられないような調停委員もいるのです。
そこでこの記事では、問題のある調停委員が担当になった場合の対応について解説します。
目次
苦情や変更を申し出たくなるような調停委員は存在する
冒頭に書いたとおり、苦情や変更を申し出たくなる質の低い調停委員は存在します。
調停委員は、任命された後に裁判所や調停協会主催の研修を受け、調停運営の知識や作法を学んでから調停事件を担当します。
任命後しばらくはベテラン調停委員とペアを組み、調停のやり方を学びます。
それでも調停委員一人ひとりの質はピンキリで、私たち当事者から見ても明らかにおかしい調停委員がいるのが実情です。
離活ブログを見ると、次のような問題が指摘されています。
- こちらを見下した態度で敬語も使わない
- 人を小ばかにしてくる
- 「その程度で離婚するなんて我慢が足りない」と言ってくる
- 相手の味方をする
- 気だるそうな態度で話を真剣に聞こうとしない
- 調停中に居眠りする
- 主張した内容と異なることを相手に伝える
- 相手の主張を誤解したまま伝えてくる
- 自分の価値観を押し付けてくる
- 夫婦の主張を無視した解決策を押し付けてくる
- 前回期日の内容を全く覚えていない(メモも取っていない)
- 調停期日に遅れてきて謝りもしない
- 男性の調停委員が女性の調停委員を小間使いにしている
- 調停委員2人が全く異なる助言をしてくる
目を疑うかもしれませんが全て離婚調停を経験した人の体験談です。
調停委員の苦情を申し出る方法
調停委員の苦情を申し出る先は2つあります。
- 調停事件を担当する裁判所書記官
- 調停をしている家庭裁判所の総務課
離婚調停では裁判所書記官へ苦情を申し出る
調停委員の苦情は、調停事件を担当している書記官に申し出るのが基本です。
書記官に苦情を申し出ると、調停委員会を構成する裁判官に伝わります。
そして、裁判官が事実確認を行い、調停委員に否があれば対応を改めるよう指導してくれます。
苦情を受けた後は裁判官が調停に参加し、調停委員の言動や態度を確認して不適切なところがあればフォローすることもあります。
調停委員の問題が裁判所として見過ごせないほど大きい場合、例外的に調停委員が変更されることが
総務課に苦情を申し出る
裁判所書記官に苦情を申し出ても状況が変わらなければ、調停をしている家庭裁判所の総務課に苦情を申し出ます。
総務課に苦情を申し出るときは、次の内容を記載した書面を作成します。
- 宛名
- 書面の作成年月日
- 書面のタイトル
- 事件番号
- 事件名
- 当事者名
- 担当調停委員名
- 苦情の具体的内容(5W1Hを意識し、できる限り具体的に記載する)
- 書面作成者の日中に連絡がつく連絡先
書面化するのは、口頭だと担当者限りの対応で終わってしまうリスクがあるからです。
宛名を家庭裁判所長にしておくと、少なくとも総務課長、事務局次長、事務局長レベルまで書面が回ります。
また、調停を担当している家事部にも情報が届き、何らかの対応がされることが多いです。
職員が書面の受け取りに消極的な姿勢を示した場合、夜間受付に提出すれば必ず受理されます。
調停委員に直接苦情を伝えないこと
調停委員の不適切な言動や態度に接すると、直に不満をぶつけたくなるかもしれません。
でも、調停委員に不満を述べても何の解決にもなりません。
感情的に対立して調停の進行が遅れるか、受け流されて終わるだけです。
調停委員の問題は、調停委員個人や個別の事件の問題として片づけるのではなく、家庭裁判所全体の問題として対応してもらうべきです。
そして、具体的な対応をさせるには裁判所書記官や総務課などに苦情を申し出ることが重要になります。
調停委員を変更できるか
結論から言うと、調停委員には忌避の規定がありません。
したがって、基本的には変更できません。
調停委員の忌避と除斥
忌避とは、当事者からの申立てに基づいて、手続きの公正さを失わせるおそれのある人を執務執行から排除することです。
家事調停に関与する裁判所職員(裁判官、調停委員、裁判所書記官、家庭裁判所調査官)のうち、忌避の規定がないのは調停委員だけです。
一方で、調停委員の除斥については家事事件手続法第16条(第10条、第12条第2項・第8項・第9項の規定を、忌避に関する部分を除いて準用)に規定があります。
除斥とは、法律に規定された要件に当てはまり、手続きの公平さを失わせるおそれのある人を、当然に職務執行から排除することです。
例えば、調停委員と当事者間に次のような関係がある場合は除斥が適用されます。
- 調停事件の当事者の配偶者(または配偶者であった)
- 四親等内の血族
- 三親等内の姻族若しくは同居の親族
- 後見人(成年後見人、保佐人、補助人)など
除斥が規定されているのは、調停委員と当事者が血縁関係や顔見知りというケースがあり得るからです。
でも、除斥の規定を知らず、顔見知りが当事者として調停に出席しても気にせず調停を進めようとする調停委員もいます。
そのため、調停委員が血縁関係や顔見知りなら、自分から担当の書記官に伝えましょう。
調停委員の忌避制度は検討されたが見送られた
実は、家事事件手続法が制定されるにあたり、調停委員の忌避制度が検討されたが見送られたという経緯があります。
調停委員の忌避制度に賛成する意見もありましたが、以下のような反対が根強く、規定されないことになりました。
理由 | 説明 |
調停委員は民間人 | 民間人から選出される調停委員には、他の裁判所職員と異なり、公平さを守るための当然の制度として除斥や忌避が認知されていない
制度を設けると調停委員に過剰な精神的な負担がかかる |
忌避制度の濫用 | 当事者が調停員の忌避制度を濫用して調停を引き延ばし、早期解決を目指す当事者の不利益となるおそれがある |
調停委員の選択 | 当事者が主観的な理由で調停委員を変更することは容認されるべきではない |
調停委員の忌避制度が規定されなかったことには、調停制度の特徴も影響しています。
調停は当事者の合意に基づいて物事を決める制度です。
調停委員には、調停事件の解決を目的として当事者を説得や助言はできても、当事者を従わせることはできません。
当事者は、調停委員の説得や助言を拒否することができ、申立人には調停の取下げという選択肢もあります。
つまり、裁判のように判断を強制されることがないのです。
そのため、他の裁判所職員のように忌避制度を設ける必要性まではないと判断されたのです。
どうしても調停委員を変更したい場合
どうしても担当調停委員を変更したい場合、係属中の調停を取り下げ、改めて離婚調停の申立てをしなおす方法があります。
ただし、調停歴のある家庭裁判所に別の調停を申し立てた場合、「事情が分かっている」という理由で同じ調停委員が担当することもあります。
そのため、取り下げ時に「調停委員に不満がある。変更したいが認められないので取り下げるが、すぐに離婚調停を申し立てしなおす。」と担当の記官に宣言しておきましょう。
こうしておけば、別の調停委員に担当してもらえる可能性が高くなります。
調停委員に伝えても裁判官や書記官まで伝わらない可能性があるので、取下書を持参する書記官に直に伝えることが大切です。
調停委員の人数が少ない地方の支部で、何度申し立てても同じ調停委員が担当となる場合、合意管轄を利用して別の家庭裁判所で調停を行う方法もあります。
夫婦が管轄合意することが前提で、調停を行う家庭裁判所までの時間と費用がかさむことになりますが、どうしても変更したい場合は検討してください。
調停委員への苦情や変更(忌避)の申し出のまとめ
調停委員への机上の申し出先は2つ。
- 調停事件を担当する裁判所書記官
- 調停をしている家庭裁判所の総務課
まずは書記官に苦情を申し出て、改善されないなら総務課に申し出るのが基本です。
調停委員の変更は原則として認められません。
方法はありますが必ず変更してもらえるわけではないので、基本的には担当とうまく付き合う方法を検討することになります。