- 「母子家庭の住民税って年収いくらまで非課税なの?」
- 「世帯年収250万円以下で非課税って本当?」
その疑問、記事を読めば10分で解決します
具体例が多いのでちょっと長めです…
あや
所得の低い母子家庭のシングルマザーは、住民税を免除・軽減を申請できます。
住民税が免除・軽減されると次のようなメリットが。
- 税金支払い分のお金を生活費に充てられる
- 住民税の課税金額が要件となる制度を利用できる(保育料や授業料など)
でも、税金に苦手意識があり、利用できる制度があるのにスルーしている人ってとても多いです。
そこで、この記事では、母子家庭の住民税について税金に詳しくない人でも分かるように解説します。
- 「お役所の税金記事って分かりにくい!」という人
- 「うちって収入少ないけど住民税の免除受けられるの?」と思っている人
- 住民税の計算方法を具体的に知りたい人
目次
住民税とは
住民税とは、地方税の一つです。
実は、住民税というのは正式名称ではありません。
次の2つの税金をまとめて住民税と呼んでいます。
- 道府県民税
- 市区町村民税(東京23区は特別区民税)
住民税の課税方法
住民税は、市区町村が税額を計算して課税する「賦課課税方式」を採用しています。
具体的には、次の市区町村から住民税を課税されます。
1月1日時点で住民登録している(住民票がある)市区町村
1月2日以降に他の市区町村へ転居した場合も、1月1日時点で住んでいた市区町村に住民税の全額を納付します。
転居先の市区町村では課税されません。
1月1日時点では大阪府枚方市に住んでいて1月2日に大阪府高槻市に転居した場合
住民税の納付先:大阪府枚方市
住民税の納税時期
住民税額は、ある年の1月1日から12月31日までの所得に基づいて計算されます。
住民税の支払時期は翌年の6月から翌々年5月までです。
会社員の場合、給与から引き落とされます。
自営業の場合、毎年5月に市区町村役場から「住民税納付予定額の通知書」と「納付書」が届くので、納付書に記載されている金額を支払います。
2020年(令和元年)度の支払時期は、次のとおりです。
項目 | 説明 |
課税所得 | 2019年1月1日~12月31日に得た所得 |
納税先 | 2020年1月1日時点で住んでいた市区町村 |
納期間 | 2020年6月~2021年5月 |
住民税の仕組み
住民税(道府県民税と市町村民税)は、所得割と均等割の2つで構成されています。
住民税の構成 | 説明 |
所得割 | 前年の1月から12月の所得に応じて納税 |
均等割 | 同じ自治体に住む、税金を負担する能力を有する人が均等に納税 |
つまり、住民税の内訳は4つあるわけです。
住民税の中身 | |
道府県民税の所得割 | 道府県民税の均等割 |
市町村民税の所得割 | 市町村民税の均等割 |
細かく言うと、住民税には「利子割」、「配当割」、「株式譲渡所得割」もありますが、金額が小さいので割愛しています。
アヤ
住民税の税率・税額
住民税の所得割の税率と均等割の税額は、次のとおりです。
道府県民税 | 市町村民税 | 合計 | |
所得割 | 4% | 6% | 10% |
均等割 | 1,500円 | 3,500円 | 5,000円 |
※均等割は、臨時特例法対象期間(2014年から2023年)の金額(道府県民税と市町村民税いずれも500円増)を表示
上記の表の記載は標準的な税率や税額です。
独自の税率や税額を定めている市区町村もあるので、住んでいる市区町村に確認する必要があります。
- 神奈川県:水源環境保全・再生のため、県民税所得割の税率に00.025%を上乗せ、県民税均等割の税額に300円上乗せ
- 名古屋市:市民税の減税を実施し、市民税所得割の税率が7.7%に減率、市民税均等割の税額が200円減額
住民税非課税世帯とは(母子家庭の世帯年収はいくらまで)
住民税非課税世帯とは、住民税(所得割と均等割の両方)の課税が免除される(非課税になる)世帯です。
住民税の非課税には2種類あります。
- 所得割と均等割の両方が非課税になる場合
- 所得割または均等割の一方だけが非課税になる場合
所得割と均等割の両方が非課税になる場合(=免除)
次の要件のいずれかを満たす場合、所得割と均等割りの両方が非課税になります(=免除)。
対象 | 説明 |
生活保護 | 生活保護法による生活扶助を受けている |
未成年者 | 前年の合計所得金額が125万円以下
(年収が約204万円以下) |
障害者 | |
寡婦
(特別の寡婦、寡夫) |
|
低所得者 | 前年の合計所得金額が、自治体の定める金額以下 |
「前年の合計所得金額が、自治体の定める金額以下」という要件は、住んでいる地域で確認する必要があります。
一般的には、次のような要件が設けられています。
扶養家族の有無 | 要件 |
あり | 合計所得金額<35万円(給与収入の場合は約100万円以下) |
なし | 合計所得金額<35万円×(本人+扶養親族の人数)+21万円 |
所得割が非課税になる場合
所得が次の要件に当てはまる場合、住民税のうち所得割だけが非課税になります。
所得割が非課税(免除) |
所得<35万円×(控除対象配偶者・扶養親族の合計数+1)+32万円
※控除対象配偶者または扶養親族がいない場合:35万円(32万円も加算されない) |
均等割が非課税になる場合
所得が次の要件に当てはまる場合、住民税のうち均等割だけが非課税になります。
均等割が非課税(免除) |
所得<35万円×(控除対象配偶者・扶養親族の合計人数+1)+21万円
※控除対象配偶者または扶養親族がいない場合:35万円(21万円も加算されない) |
いずれも一般的な非課税の基準です。
非課税基準は各市区町村によって異なります。
非課税の手続きを進める前に、住んでいる地域に確認しましょう。
アヤ
住民税が免除される母子家庭の世帯年収はいくらか
給与所得者の所得は、次の式で算出されます。
住民税非課税世帯(免除)の要件である「世帯全員の合計所得金額が125万円以下」とは、「世帯年収が204万円以下」の場合です。
「世帯年収が125万円以下」だと誤解する人が多いので、注意してください。
アヤ
母子家庭が住民税非課税世帯となる場合
母子家庭が住民税非課税世帯(所得割と均等割の両方が免除)となるのは、次のような場合です。
母子家庭が住民税非課税世帯になる条件 | |
シングルマザーの状態 | 寡婦または特別の寡婦 |
世帯の前年所得 | 合計所得金額が125万円以下(年収が約204万円以下)
※シングルマザーだけでなく世帯全体の合計 |
寡婦または特別の寡婦というのは、税法上の寡婦控除に関する用語です。
アヤ
住民税が非課税かどうか確認する方法
給与所得者の場合、前年の合計所得金額が125万円以下(年収が約204万円以下)かどうかは、源泉徴収票で確認できます。
「源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄<125万円」なら、前年の合計所得金額が125万円以下です。
また、「源泉徴収票の「支払金額」欄<約204万円」なら、前年の年収が204万円以下です。
母子家庭のシングルマザーの住民税の計算方法(給与所得者の場合)
住民税の計算方法について、具体的なケース(C子さん)を使いながら解説していきます。
なお、復興特別所得税については考慮していません。
- 氏名:C子さん
- 性別:女性
- 年齢:45歳
- 勤務形態:派遣社員
- 年収:250万円
- 1年間に支払った社会保険料:25万円
- 1年間に支払った医療費15万円(C子さん本人と子どもの合計額)
- 生命保険料:5万円
- 家族構成:夫と離婚して子ども(18歳)と2人暮らし
1.前年所得の確認
会社員の前年所得は、次の式で算出されます。
前年の1月1日から12月31日までの1年間に得た収入(年収)から、給与所得控除を差し引いた金額
給与所得控除とは、会社員の所得税などの計算をするときに年収から差し引くものです。
個人事業主は自分で必要経費を差し引けますが、同じことが会社員にはできません。
そこで、税負担について個人事業主との公平性を担保するために、年収に応じて給与所得控除を差し引く仕組みがあります。
年収に応じた給与所得控除額は、次のとおりです。
給与収入(支払金額) | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%(65万円未満の場合65万円) |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1000万円超 | 220万円(上限) |
※令和2年(2020年)度の場合
C子さんの場合
C子さんの年収は、250万円です。
したがって、給与所得控除額は次のとおり算出できます。
- 計算式:給与所得控除額「180万円超360万円以下」の収入金額×30%+18万円
- C子さんの給与所得控除額:250万円×0.3+18万円=93万円
前年所得は、年収から給与所得控除額を差し引きます。
- 計算式:年収-給与所得控除額
- C子さんの前年所得:250万円-93万円=157万円
2.所得控除額の計算
所得控除とは、税金を治める人の個別の事情を考慮し、税負担を調整するための制度です。
所得控除には、次のような種類があります。
- 雑損控除:災害、盗難、横領など資産が侵害された場合の控除
- 医療費控除:医療費を支払った場合の控除
- 社会保険料控除:社会保険料を支払った場合の控除
- 小規模企業共済等掛金控除:共済契約に基づく掛け金を支払った場合の控除
- 生命保険料控除:生命保険料を支払った場合の控除
- 地震保険料控除:地震保険料を支払った場合の控除
- 寄附金控除:寄付をした場合の控除(ふるさと納税でも利用できる)
- 障害者控除:障害者である場合の控除
- 寡婦控除・寡夫控除:寡婦(特別の寡婦)や寡夫である場合の控除
- 勤労学生控除:勤労学生である場合の控除
- 配偶者控除:所得が38万円以下の配偶者がいる場合の控除
- 配偶者特別控除:所得が38万円を超える配偶者がおり、一定の要件を満たす場合の控除
- 扶養控除:扶養親族がいる場合の控除
- 基礎控除:個別事情に関わらず一律に33万円控除
どの所得控除が適用されるかは個人の事情によって異なります。
- 扶養親族の有無
- 生命保険料支払いの有無
- 寡婦の要件を満たすか否か
適用される所得控除が分かったら、全て足し合わせて合計額を計算します。
C子さんの場合
C子さんに適用される所得控除は、次のとおりです。
- 基礎控除:一律33万円
- 扶養控除:33万円(子どもが18歳)
- 社会保険料控除:15万円(支払った社会保険料全額)
- 生命保険料控除:3万円(支払った保険料×1/4+17,500円)
- 寡婦控除(特別の寡婦):30万円(離婚、扶養親族の子ども、合計所得金額の要件をすべて満たす)
したがって、C子さんの所得控除の合計額は次のとおりです。
- C子さんの所得控除の合計額=33万円+33万円+15万円+3万円+30万円=114万円
3.課税所得の計算
課税所得とは、年収から、非課税の手当などと所得控除を差し引いた所得です。
課税所得の計算式は、次のとおりです。
- 課税所得=前年所得(前年の年収-給与所得控除額-非課税の手当など)-所得控除合計
非課税の手当など
非課税の手当などには、以下のものがあります。
- 通勤手当
- 旅費
- 研修にかかる費用
- 勤務に必要な衣服の購入費
- 接待費
C子さんの場合
C子さんの前年所得136万円から、所得控除合計額114万円を差し引いて課税所得を計算します。
- C子さんの課税所得:157万円-114万円=43万円
4.所得割額の計算
所得割額は、次のとおり決まっています。
- 道府県民税が4%
- 市町村民税が6%
住民税の内訳 | 所得割 |
道府県民税 | 4% |
市町村民税 | 6% |
合計 | 10% |
C子さんの場合
- 道府県民税:43万円×0.04=17,200円
- 市町村民税:43万円×0.06=25,800円
- C子さんの所得割額:8800円+13,200円=43,000円
5.均等割額の計算
均等割額は次のとおりです。
- 道府県民税:1,500円
- 市町村民税:3,500円
住民税の内訳 | 均等割額 |
道府県民税 | 1,500円 |
市町村民税 | 3,500円 |
合計 | 5,000円 |
C子さんの場合
- 道府県民税:1,500円
- 市町村民税:3,500円
- C子さんの均等割額の合計:1,500円+3,500円=5,000円
6.調整控除額の計算
調整控除額とは、税負担を調整するために導入されている制度です。
所得控除のうち人的控除額(基礎控除、配偶者控除、扶養控除)について、住民税と所得税で控除額に差があることから設けられています。
同じ所得額でも、住民税の方が所得税より課税所得が多くなるのが一般的です。
そのため、住民税の所得割額から一定額を控除(調整控除額)して調整します。
調整控除額の計算方法は、次のとおりです。
要件 | 計算方法 |
課税所得が200万円以下 | 以下のいずれか少ない金額の5%
・所得税と住民税の人的控除額の差額の合計額 ・課税所得額 |
課税所得が200万円以上 | ・(所得税と住民税の人的控除額の差額の合計額-(課税所得額-200万円))×5%
※2,500円未満の場合は2,500円 |
C子さんの場合
C子さんの課税所得22万円なので、「課税所得が200万円以下」で調整控除額を計算します。
- 所得税と住民税の人的控除額の差の合計額:15万円(基礎控除5万円+扶養控除5万円+寡婦控除5万円)
- 課税所得額:43万円
C子さんの場合、所得税と住民税の人的控除額の差の方が額が少ないので、こちらを採用します。
- C子さんの調整控除額:15万円×0.05=7,500円
7.住民税額の計算
住民税額は、以下の計算式で計算します。
- 住民税額=所得割額+均等割額-調整控除
C子さんの場合
1.~6.までで出した数値を当てはめて、住民税額を算出します。
- 所得割額:43,000円
- 均等割額:5,000円
- 調整控除額:7,500円
- C子さんの住民税額:43,000円+5,000円-7,500円=40,500円
母子家庭の住民税のまとめ
税金に関する制度は、税金への苦手意識から利用していない人が少なくありません。
でも、利用すれば税負担が軽くなって生活水準がグッと改善します。
離婚後の生活を少しでも楽にするために、食わず嫌いを止めて積極的に利用してみてください。
確かに「ややこしい制度」は存在しますが、市区町村役場などの窓口に相談すれば丁寧に説明してもらえます。
必要な書類や手続きのやり方も教えてもらえます。
「どこに聞けばいいか分からない」場合は、市区町村役場の総合インフォメーションで相談しましょう。
担当窓口や、他の行政機関を紹介してもらえます。