- 「子の氏の変更許可の申立書ってどう書くの?」
- 「即日審判してくれるって聞いたけど…」
- 「郵送って返信封筒とかいるの?」
その疑問、記事を読めば3分で解決します。
あや
結婚すると、夫婦のどちらかが相手の戸籍に入ります。
一般的には、女性が男性の戸籍に入ることが多くなっています。
そして、夫婦の間に子供が生まれると自動的に夫婦の戸籍に入ります。
一方で離婚すると、結婚するときに相手の戸籍に入った人は強制的に戸籍から出されます。
戸籍に関する法律で決まっているからです。
でも、夫婦が離婚しても子供の戸籍には動きがありません。
結婚して妻が夫の戸籍に入った家庭について、戸籍の変動を確認します。
時系列 | 夫婦と子供が入る戸籍 | ||
夫 | 妻 | 子供 | |
結婚後 | 夫の戸籍 | 夫の戸籍 | - |
出産 | 夫の戸籍 | ||
離婚後 | 結婚前の戸籍
または 新戸籍 |
夫が親権者になって子供を引き取るなら戸籍上の問題はありません。
でも、妻が子供を引き取る場合、母子の戸籍が別々になってしまいます。
こうした離婚後に母子が別々の戸籍に入った状態を修正するのが「子の氏の変更許可」という審判です。
時系列 | 夫婦と子供が入る戸籍 | ||
夫 | 妻 | 子供 | |
離婚後 | 夫の戸籍 | 結婚前の戸籍
または 新戸籍 |
夫の戸籍 |
子の氏の変更許可 | 妻(母親)と同じ戸籍 |
子の氏の変更許可で許可の審判をもらえば、子供を母親と同じ戸籍に入れることができるようになります。
母親が婚姻中の氏を使用する手続(婚氏続称)をすれば、表面的に母子の苗字を同じにはできます。
でも、戸籍は別々のままなので、同じにするには子の氏の変更許可が必要です。
あや
でも、子の氏の変更許可は家庭裁判所の手続き。
申立書もややこしいです。
そこでこの記事では、子の氏の変更許可の手続きの内容を解説し、記載例を示しながら申立書の書き方を説明します。
- 母子の戸籍と苗字がバラバラになっているのを一緒にしたい
- 子の氏の変更許可申立書の書き方が分からない
子の氏の変更許可審判とは
子の氏の変更許可審判とは、親子の戸籍と苗字(氏)が異なるときに、子供を親と同じ戸籍に入れるための家庭裁判所の手続きです。
日本の戸籍は苗字と連動しています。
そのため、母子の戸籍が別々だと苗字も別々になり、日常生活で何かと不都合が生じます。
そのため、離婚によって元夫の戸籍から出た元妻が子供を引き取る場合、多くのケースで子の氏の変更許可審判が申し立てられています。
子の氏の変更許可の法的根拠
子の氏の変更許可は、民法第791条第1項に規定されています。
子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
引用:民法第791条第1項
後で詳しく書きますが、実は、子の氏の変更許可を終えただけでは母子の戸籍と苗字は同じにはなりません。
もう一つ別の手続きが必要です。
あや
子の氏の変更許可審判申立書の書式と書き方
子の氏の変更許可審判申立書の書式は、家庭裁判所で交付してもらいます。
また、裁判所ウェブサイトからダウンロードすることもできます。
申立書は、記載例を参考にしながら記載すれば誰でも作成できます。
でも、子供の年齢によって記載が異なったり意味が分かりにくい単語も多かったりするので、具体的な書き方を説明していきます。
【記入例(子供が15歳未満の場合)】
出展:裁判所
【記入例(子供が15歳以上の場合)】
出典:裁判所
記載する欄
申立人が記載するのは、申立書の太枠で囲まれた部分です。
具体的には、以下の欄を記載します。
- 裁判所名、記入年月日
- 申立人の記名押印
- 添付書類
- 申立人(子)
- 法定代理人(父・母・後見人)
- 申立ての趣旨
- 申立ての理由
- 裁判所名・作成年月日
これらの欄は窓口担当職員などが記入するので空けておきます。
裁判所名、記入年月日
裁判所名の欄には、申立てを行う家庭裁判所名を書きます。
申し立てる先が支部や出張所の場合、家庭裁判所の左に裁判所名を記入して、その下に支部名や出張署名を記入します。
- 東京家庭裁判所
- 東京家庭裁判所立川支部
マーカー部分が記入するところ、黒字部分は印字されているところです。
記入年月日は、申立書を作成した年月日を書きます。
申し立てる日、または、その前1週間くらいの年月日を記入します。
申立人の記名押印
子供が15歳以上の場合、子供本人が氏名を記入して印鑑を押します。
子供が15歳未満の場合、子供の法定代理人が次の内容を記入して押印します。
- 子供の氏名
- 子供の法定代理人であること
- 法定代理人の氏名
子供の人数によっても、書き分けが必要です。
子供の人数 | 1人 | 2人 |
1段目 | ○○(子供の氏名)の法定代理人 | 法定代理人の氏名 |
2段目 | ○○(1人目の子供の氏名)○○(2人目以降の子供の名)の法定代理人 | 法定代理人の氏名 |
添付書類
次の2つにチェックを付けます。
- 申立人(子)の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 父・母の戸籍謄本(全部事項証明書)
揃っていない書類がある場合はチェックせず、申立て時に窓口で事情を説明してください。
申立人(子)
- 本籍
- 住所
- 電話番号
- 氏名(フリガナ)
- 生年月日
- 年齢
6項目すべて記入します。
子供が外国籍の場合、本籍欄に国籍を記入します。
本籍や住所は、戸籍謄本や身分証明書の記載に合わせます。
「丁目」、「番地」、「号」などを省略せず記入してください。
記載が異なると、窓口で修正を求められることがあります。
複数の子供について同時に申し立てる場合、2人目以降の本籍と住所が1人目と同じなら「※上記申立人と同じ」にチェックします。
異なるときは個別に記入します。
法定代理人(父・母・後見人)
子供が15歳未満の場合にのみ記入します。
法定代理人の続柄(父・母・後見人)に〇をつけ、次の4の項目を記入します。
- 本籍
- 住所
- 電話番号
- 氏名(フリガナ)
申立人の子供と住所が同じ場合、「上記申立人の住所に同じ」と記入すれば足ります。
法定代理人欄には2人分の氏名(フリガナ)を書く枠がありますが、1人だけ記載しておけばOKです。
申立ての趣旨
このように印字されているので、申立人の氏()には現在の氏を書きます。
「1母・2父・3父母の氏()」には変更を希望する氏を記入し、「1母、2父、3父母」のいずれかに〇をつけます。
申立ての理由
「父・母と氏を異にする理由」の欄は、父または母に丸をつけます。
また、理由を1から7までの選択肢のうち当てはまる数字に丸をつけ、異にする理由が生じた年月日を記入します。
「7その他」を選択する場合、理由を簡潔に記載する必要があります。
「申立ての動機」の欄は、1から6までの選択肢から当てはまるものを選んで数字に丸をつけます。
父母の離婚によって親子の戸籍が別々になった場合は、「1父母の離婚」を選択します。
「6その他」を選択する場合、理由を記載する必要があります。
複数の子供が申し立てを行い、それぞれ申立ての動機が異なる場合は簡単な事情を余白に書きます。
子の氏の変更許可審判の申立て
子の氏を変更するには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の審判を申し立てて許可してもらう必要があります。
申立てができる人(申立人)
申立人は「子供」です。
ただし、子供の年齢が15歳未満なら、子供の法定代理人が代理で申し立てることができます。
子供の年齢 | 申立人 |
15歳未満 | 子供の法定代理人が代理 |
15歳以上 | 子供本人 |
法定代理人というのは、法律で決まっている次のような人のことです。
- 子供の親権者となった父または母
- 未成年後見人になった祖父母やその他親族
15歳未満の子供の場合、親権者となった親が子供を代理して申し立てます。
離婚後に15歳未満の子供が非親権者と同居する場合
15歳未満の子供を代理して「子の氏の変更許可」の審判の申立てができるのは、子供の法定代理人です。
日本は離婚後単独親権制なので、離婚時に子供の親権者とならなかった親は子供の法定代理人にはなれません。
そのため、子供を代理して子の氏の変更許可審判を申し立てることはできません。
子供と同居して養育していても、真剣がないと子供の代理人にはなれないのです。
親権者と監護権者が異なるときに、監護権者が子供を代理することを認めた判例もあります。
でも、例外的なケースです。
離婚した後、15歳未満の子供が非親権者と同居している場合、親子の戸籍と苗字を揃える方法は3つあります。
- 親権者に子の氏の変更許可審判を申し立ててもらう
- 子供が15歳以上になるのを待って、子供自身に申し立てをさせる
- 親権者変更の調停または審判で子供の親権者になり、子の氏の変更許可判を申し立てる
最も手軽なのは親権者に依頼する方法です。
でも、夫婦関係が険悪なまま離婚した場合、元夫に協力してもらうのは相当ハードルが高いです。
離婚前に子の氏の変更について依頼し、協力を求めておく必要があります。
「いざとなれば親権者を変更すればよい」と思うかもしれません。
でも、離婚後に親権者を変更するには家庭裁判所の手続きが必要です。
しかも、変更が認められるのは、元夫の同意が得られるか(調停)、子供のために変更が必要な場合だけです(審判)。
さらっと書いていますがハードルは相当に高くなっています。
親権者を変更するつもりで離婚するときはいったん親権を譲る人がいますが、離婚後に変更できるケースはわずかです。
申立てをする場所(管轄の家庭裁判所)
子供の住所地を管轄する家庭裁判所です。
氏の変更を希望する子供が複数いる場合、子供の一人の住所地を管轄する家庭裁判所にまとめて申し立てます。
きょうだいが離れて暮らしている場合でも、同じ家庭裁判所で手続きができます。
あや
家庭裁判所は、支部や出張所を含めると全国に300ヶ所以上あります。
- 全 国:本庁が50ヶ所
- 支 部:203ヶ所
- 出張所:77ヶ所
各家庭裁判所が異なる地域を管轄しています。
そのため、事前に子供の住所地を管轄する家庭裁判所を確認する必要があります。
申立ての必要書類
- 子の氏の変更許可審判申立書:1通
- 子供の戸籍謄本:1通(発行から3ヶ月以内で、父母の離婚や親権者の記載があるもの)
- 子供が入籍を希望する戸籍の謄本(非親権者の父または母の戸籍謄本):1通(同上)
- 同意書:1通(子供が入籍を希望する戸籍に、父母が異なる15歳以上の人がいる場合)
- 印鑑:認印
- 顔写真付きの身分証明書:窓口での提示のみ
複数の子供が申し立てを行う場合、同じ書類は1通だけ提出すれば足ります。
家庭の状況などにより、追加で書類などの提出を求められることがあります。
あや
子供の同意書について
子供を入籍させたい戸籍に、父母が異なる15歳以上の人がいる場合、その人に同意書を作成してもらって申立て時に添付する必要があります。
同意書の書式は次のとおりですが、同様の内容を独自に作成しても問題はありません。
申立てにかかる費用
- 収入印紙:子供1人につき800円分
- 郵便切手:数百円分(各家庭裁判所が指定する額)
郵便切手は、審判結果の郵送などに使用されます。
郵便切手は、各家庭裁判所によって提出する金額や切手の枚数が異なります。
事前に、申立てを行う家庭裁判所に確認してください。
あや
申立ての期間
申立ての期間に制限はありません。
次のようなケースでは、基本的に子の氏の変更許可審判を求めることになります。
- 離婚後に監護親と子供の戸籍が別々になった(親子の苗字が別々になった)
- 子供を監護親の戸籍に入れる(親子の苗字を同じにする)には、
郵送による申立て
子の氏の変更許可審判の申立ては、郵送による申立てが認められています。
郵送によって申し立てる場合に必要な書類と費用は、次のとおりです。
郵送申立てのみ必要な資料はマーカーを引いてあります。
- 子の氏の変更許可審判申立書(記入、署名押印済みのもの)
- 子供の戸籍謄本
- 子供が入籍を希望する戸籍の謄本
- 同意書(必要な場合のみ)
- 顔写真付きの身分証明書のコピー
- 収入印紙800円分
- 郵便切手数百円分(各家庭裁判所の指定した額と枚数)
郵送による申立ては、家庭裁判所に出向く必要がありません。
便利ですが、郵送に数日かかるのがデメリットです。
また、申立書や必要書類に不備不足があると訂正や再提出を求められ、さらに時間がかかってしまいます。
申立てが受理された後の流れ
管轄の家庭裁判所に申立てが受理されると、家庭裁判所が子供の利益の観点から子の氏の変更の許否を判断します。
親子と同じ氏を称することは民法第791条で認められています。
そのため、申立書の記載に不備がなく必要書類も揃っていれば、基本的には戸籍謄本の審理だけで許可されます。
申立てが受理された時点で、子供が親権者と同居または同居予定なら、特段の事情がない限り許可されます。
あや
申立てから審判が確定するまでの日数・期間
標準的な審理日数・期間は10日程度です。
審判後、家庭裁判所から申立人宛てに審判書謄本が郵送されます。
次の条件がすべてそろっている場合、申し立てをした当日に審判が出ることもあります。
- 例申立書の記載に不備がない
- 必要書類が揃っている
- 戸籍謄本にも特段の問題がない
即日審判を実施していない家庭裁判所もあるので、事前確認が必要です。
あや
子の氏の変更許可の審判が確定した後の手続
「子の氏の変更許可」の審判は、子の氏を変更することを家庭裁判所が認めるという手続です。
実際に子の氏を変更するには、審判確定後、市区町村役場に入籍届を提出して親子の戸籍を同じにする必要があります。
まとめ
離婚後に同居する親子の苗字や戸籍が別々になると、学校や職場などで不都合が生じます。
離婚して子供を引き取ったときに親子の戸籍と苗字が別々になるなら、早めに子の氏の変更許可と入籍届を行いましょう。
手続きに期限はありませんが、早めに済ませておくと戸籍や苗字の問題を先回りして回避できます。
家庭裁判所の手続きなので「何となく難しそう」と思うかもしれません。
でも、親権者として子供を引き取っていれば短期間で許可してもらえます。
手続きにかかる費用も少しです。
調停や裁判など家庭裁判所の手続きを利用して離婚したときは、調停調書を受け取るときに手続すれば何度も足を運ぶ手間が省けます。
もしかしたら、「子供と戸籍や苗字が違っても気にならない」と思うかもしれません。
でも、親が気にしなくても子供が気にする可能性があります。
例えば、学校で友人から「なんでお前の家、親子で苗字が違うの」と聞かれ、いじめられるケースもあります。
子供のことを考えると、早めに手続きしておく方が良いでしょう。