- 元夫(元旦那)の戸籍謄本を取り寄せられるの?
- 戸籍謄本で元妻(元妻)の再婚って調べられるの?
その疑問、記事を読めば5分で解決します。
あや
離婚後に元夫(元旦那)または元妻(元嫁)の戸籍に記載された内容を確認したくなることがあります。
例えば、次のような場合です。
- 養育費の支払いの関係で元妻が再婚したかどうか知りたい
- 子供と元夫の再婚相手との養子縁組の有無を知りたい
でも、日本の戸籍は「夫婦とその間の子供(親子)を1単位として編成」され、離婚すると夫婦の一方が戸籍から出て赤の他人になります。
そのため、離婚した後に元夫または元妻の戸籍謄本を取得するには、元配偶者でも他人と同じ条件を満たす必要があります。
この記事では、離婚後に元夫や元妻、離れて暮らす子供の戸籍謄本を取得する方法について解説します。
目次
戸籍謄本を請求できる人
戸籍謄本が取得できる人は、戸籍法で規定されています。
戸籍謄本を無条件に請求できる人
戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
引用:戸籍法第10条第1項
戸籍法に規定された戸籍を無条件に請求できる人をまとめると、次のとおりです。。
- 戸籍に記載されている人(本人)
- 配偶者
- 直系尊属(父母、祖父母など)
- 直系卑属(子、孫など)
婚姻中は、配偶者として夫婦の戸籍を無条件に請求して取得できます。
また、戸籍に記載がない直系尊属や直系卑属も、親子関係などが明らかであれば戸籍を請求できます。
条件つきで戸籍謄本を請求できる人
一方で、戸籍法は、条件つきで戸籍謄本を請求できる人も規定しています。
前条第一項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
- 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
- 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
- 前2号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
引用:戸籍法第10条の2第1項
簡単にまとめると次のとおりです。
- 自分の権利の行使や義務の履行のために必要
- 公的機関へ提出するために必要
- その他、正当な事由がある
また、弁護士などの専門職が職務上請求できることも規定されています。
第一項の規定にかかわらず、弁護士(弁護士法人を含む。次項において同じ。)、司法書士(司法書士法人を含む。次項において同じ。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。次項において同じ。)、税理士(税理士法人を含む。次項において同じ。)、社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む。次項において同じ。)、弁理士(特許業務法人を含む。次項において同じ。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む。)は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該業務の種類、当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての第一項各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
引用:戸籍法第10条の3第1項
戸籍謄本を請求できる専門職は次のとおりです。
- 司法書士
- 土地家屋調査士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 弁理士
- 海事代理士
- 行政書士
元夫(元旦那)や元妻(元嫁)の戸籍謄本を取り寄せる方法
元夫や元妻の戸籍謄本を取り寄せる方法は、元配偶者が結婚中に戸籍の筆頭者だったかどうかで異なります。
戸籍筆頭者だった元夫や元妻の戸籍を取り寄せる方法
日本の戸籍制度では、結婚するときに夫婦の一方が相手の戸籍に入り、離婚するときに相手の戸籍から出ます。
一般的には、妻が夫の戸籍に入って夫の苗字を名乗り、離婚後は夫の戸籍から出ることが多いです。
そのため、以下、「結婚中に戸籍の筆頭者だった人=元夫」、「離婚によって戸籍から出た人=元妻」とします。
元妻が離婚によって元夫の戸籍から出た後も、元夫の戸籍には離婚の事実、元妻が除籍されたこと、異動先の戸籍の記載が残されています。
そのため、戸籍に記載されている人(本人)として無条件に戸籍を請求することができます。
ただし、元夫が再婚相手の戸籍に入るなどして転籍すると結婚中の戸籍が除籍されます。
転籍後の戸籍には離婚に関する記載が引き継がれず、請求者の名前も記載されないので、戸籍に記載された人(本人)として請求することはできません。
転籍後の元夫の戸籍を取得するには、戸籍法上の正当な理由を主張する必要があります。
戸籍筆頭者でなかった元夫または元妻の戸籍を請求する
次に、結婚中に戸籍の筆頭者ではなかった人(結婚時に相手の戸籍に入った人)の戸籍を請求する方法です。
日本では、結婚時に妻が夫の戸籍に入ることが多いので、以下、元妻の戸籍を請求する方法を解説します。
元妻は、離婚によって元夫の戸籍を出て別の戸籍に入りますが、必ずしも結婚前の戸籍(父母の戸籍)に戻るわけではありません。
元妻が離婚後に入る戸籍の種類は、以下のとおりです。
- 父母の戸籍
- 父母の戸籍から分籍された戸籍
- 離婚後に新しく編成された戸籍
- 離婚前に編成された戸籍
- 再婚相手の戸籍
元妻の戸籍には離婚の事実や元夫の名前は記載されず、戸籍に記載された人(本人)として請求することはできません。
そのため、自分の戸籍謄本で元妻の戸籍の異動先を確認し、異動先の市区町村役場で元妻の戸籍謄本を請求する必要があります。
元妻の戸籍が再婚などにより除籍されていれば、正当な理由を主張して除籍謄本を取得し、再び異動先を確認して現在の戸籍まで追っていきます。
- 自分の戸籍謄本を取得(戸籍に記載された本人として無条件に取得)
- 自分の戸籍謄本で、離婚直後の元妻の戸籍の異動先を確認する
- 異動先の市区町村役場で元妻の戸籍謄本を請求(正当な理由が必要)
- 除籍されていた場合は、異動先を確認
3.と4.を繰り返して元妻の現在の戸籍まで辿ります。
調停などの正当な理由を主張すれば、請求が認められないことはまずありません。
でも、かなり地道な作業で、個人で行うには時間と手間がかかります。
正当な理由の証明方法
戸籍謄本の請求で求められる正当な理由は、原則として口頭による説明で足ります。
でも、書面による証明を求める市区町村役場もあります。
離婚後に養育費調停の申立ての資料として元夫の戸籍謄本を請求する場合、調停資料とすることを説明して除籍謄本(結婚中の戸籍)を添付すれば「正当な理由」が認められます。
調停開始後なら、家庭裁判所が発行する「事件係属証明書」を添付すれば「正当な理由」の要件を満たします。
事件係属証明書の発行
事件係属証明書とは、ある事件が裁判所に係属していることを証明する書面です。
各家庭裁判所に証明書交付申請書を提出し、所定の手数料と郵便切手を支払うことで交付されます。
職務上請求を利用するか
弁護士などの専門職は、「受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合」に戸籍謄本を請求できます。
ただし、弁護士などに依頼すると高額な費用がかかります。
元夫または元妻の戸籍謄本は自力で請求することができるので、忙しくて自ら請求する時間がない場合を除いで専門職に依頼するメリットはありません。
離婚後の紛争について弁護士に依頼した場合は、職務上請求で必要な資料を集めてもらうと時間と手間を省略できます。
元旦那や元嫁の再婚と子供の養子縁組について
戸籍謄本から元旦那・元嫁の再婚や子供の養子縁組が調べられるでしょうか。
元旦那・元嫁の再婚
結論から言うと調べられます。
戸籍謄本には記載された人の身分事項が書かれます。
元旦那や元嫁の戸籍謄本を取得できれば、再婚を調べることができます。
離婚後に離れて暮らす子供の戸籍を取得できるか
離婚して親権者(監護者)にならなかった場合でも、子供の戸籍を取り寄せられます。
子供の戸籍を取得すれば、子供の戸籍が変動したかどうか確認することができます。
例えば、子供が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合や、親権者の戸籍へ入籍した場合は子供の戸籍に記載されます。
戸籍謄本の記載を確認すれば養子縁組などを知ることが可能です。
元夫や元妻の戸籍謄本を取り寄せる方法のまとめ
離婚した元夫や元妻とは赤の他人に戻るので、戸籍謄本の取り寄せも結婚中と同じようにはできません。
結婚中の戸籍によって取り寄せ方が変わるので、しっかり確認しておきましょう。
戸籍謄本を取り寄せれば元夫や元妻の再婚や子供の養子縁組について知ることができ、養育費などの検討に使うことができます。