- 離婚後同居ってどんな感じ?
- 世帯分離してても離婚後同居はバレるの?
- 離婚後同居で母子手当を受給できるルールってあるの?
その疑問、記事を読めば5分で解消します。
あや
「離婚後は夫と別々に住んで新たな人生を歩み始める」というのが一般的です。
でも近年、離婚後も同居を継続する元夫婦が増加しています。
「離婚後同居」という単語も一般に定着してきたのはその表れでしょう。
離婚後同居が増えているのはメリットが多いからです。
でも、全ての家庭で同居のメリットを受けられるわけではありません。
この記事では、離婚後同居について解説します。
- 離婚後に同居を考えている人
- 離婚後同居しながら母子手当を受給したい人
目次
離婚後同居とは
離婚後同居とは、離婚した元夫婦が同居を継続している状態です。
「夫婦関係が悪化して離婚したにも関わらず、同居を継続するのはおかしい。」と思うかもしれません。
でも法律的には何ら問題がなく、実際に離婚後同居を選択する元夫婦が増加しています。
離婚後同居は、離婚後も同居を継続する理由によって2つに分類できます。
- 単なる同居
- 事実婚
単なる同居(同棲)
単なる同居(同棲)とは、夫婦関係はすでに破綻しているのに同居を続けている状態です。
離婚に伴う条件(養育費、財産分与、慰謝料、年金分割)も取り決めて離婚したのに同居を続けている元夫婦が多くなっています。
つまり、離婚要件の「離婚意思(実質的要件)」と「離婚の届出(形式的要件)」を満たしているのに同居しているのです。
同居を続ける背景には、次のような事情があります。
- 離婚後に住む場所を変えたくない
- 子供を転校させたくない
- 経済的な事情から別居に踏み切れない
別居するよりも同居を継続した方がメリットが大きい場合に選択される離婚後同居です。
夫婦としての情緒的なつながりはすでに失われており、「損得勘定に基づく同居」と言えます。
お互いに夫婦である認識や夫婦関係を成立させる意思はなく、他人の男女が同棲しているだけの状態です。
事実婚(内縁)の離婚後同居
事実婚(内縁)とは、夫婦である認識や夫婦関係を成立させる意思はあるが、婚姻の届け出をしていない状態です。
法律上の結婚を成立させるには2つの要件を満たす必要があります。
- 夫婦関係を成立させる意思(実質的要件)
- 婚姻の届け出(形式的要件)
このうち「実質的要件は満たすが形式的要件を満たさない状態」が事実婚です。
離婚によって法律上の結婚による権利義務は消滅します。
子供がいれば夫婦の一方が親権者になり、戸籍には離婚の事実が記載されます。
でも、表面上は婚姻中の夫婦と何ら変わりません。
夫婦別姓のため、多額の債務返済に配偶者を巻き込まないためなど、夫婦関係は離婚するほど悪化していないが、何らかの事情で離婚した場合に選択される離婚後同居です。
本来、事実婚(内縁)は、婚姻意思はあるけど婚姻の届出をしていない状態を指す言葉です。
でも、離婚後も夫婦として共同生活を送っている男女についても、事実婚という言葉が使われるのが一般的になっています。
あや
離婚後同居を選択する理由=離婚後同居のメリット
離婚後同居が増加しているのは、離婚後も元配偶者と同居することで得られるメリットがあるからです。
一般的には次のようなメリットがあります。
住み慣れた環境での生活を継続できる
離婚して別居すると、夫婦の一方が住み慣れた自宅や地域を離れて新たな住居に転居する必要があります。
離婚後に新居を探すのは想像以上に手間と時間と費用がかかりますし、新しい環境に慣れるのも時間がかかります。
離婚後同居を継続すれば住み慣れた環境で生活し続けることができ、新居を探したり新しい環境に慣れたりする必要がありません。
経済的に余裕がない場合に選択されやすい
離婚後同居を選択するのは、経済的に余裕のない男女であることが多いです。
夫婦関係は悪化して離婚までしたけれど、現実問題として元夫婦が別々に生活するだけの経済力が男女の両方または片方になく、同居を継続しているのです。
住む場所を借りるお金がなくて離婚後同居を継続する人もいれば、養育費を支払わない代わりに元妻を自宅に住まわせるというケースもあります。
離婚後同居を続けながら新たなパートナーを見つけ、再婚と同時に同居を解消するというケースもあります。
生活費の負担が少なくて済む
通常、離婚後は元配偶者に頼らず、自分で働いて得た収入で生活を維持させなければなりません。
婚姻中に専業主婦だった人も、経済的に自立して生活することが求められます。
でも実際のところ、無職期間が長い人が離婚後に安定した仕事に就くのは難しく、シングルマザーの貧困は社会問題にもなっています。
離婚後同居を選択すれば、婚姻中と同じとまではいかなくても夫婦で生活費を分担できるので、経済的な負担は軽くなります。
転勤をせずに済む
離婚後別居をすれば、離婚後に転居する必要がないので転居に伴う転勤・異動の必要がありません。
自宅からの通勤手段さえ変える必要がなく、表面上は婚姻中と同様の就労生活を送れます。
離婚後に転職を余儀なくされる人もいますが、離婚後同居なら転職も必要ありません。
子供を転校させずに済む
離婚時に問題になりやすいのが、子供の転居とそれに伴う転校です。
日本では、離婚時に母親が子供を連れて自宅を出るケースが多いので、子供の転居や転校が問題となりやすいのです。
離婚時の転居や転校は、親の離婚で大きなダメージを受けた子供に追い打ちをかけます。
転居先で引きこもりがちになったり不登校に陥ったりする原因の一つにもまります。
離婚後も同居を継続すれば、子供を婚姻中と同じ地域に住まわせて同じ学校に通わせることができ、離婚による影響を抑えることができます。
住む環境の変化は子供に大きな影響を与える
「引っ越しくらい」と思うかもしれません。
でも、住む環境の変化は子供に大きな影響を与えます。
子供が地域や学校のコミュニティに溶け込んでいるほど、引っ越しによる影響は大きくなります。
親としては、離婚という一大イベントに直面しているので、「引っ越しくらい大したことない」と思いがちです。
でも、子供としては、親の離婚に巻き込まれた上に環境まで変えられてはたまったものではありません。
家庭裁判所でも、子供の住む環境をできるだけ変えずに済むような判断がなされる傾向がありますが、これも子供への影響を考慮しての判断です。
子供が父母との同居を継続できる
子供の健全な成長には、父母両方の関わりが欠かせないことは一般的に知られています。
離婚後単独親権制を採用している日本では、離婚後は父母の一方が親権者となって子供を引き取ります。
それなのに、諸外国のように非親権者の面会交流権が十分に保証されていません。
「月1回、数時間程度の面会交流」が一般的ですし、面会交流の機会すら親権者の一存で奪われるケースが相次いでいます。
そのため、非親権者と子供の関わりが薄くなりがちです。
離婚後同居を継続すれば子供は父母との同居を継続することができ、父母の両方から愛情を注いでもらうことができます。
父母はそれぞれ思惑があって離婚後同居しているはずですが、共同養育を地でいくかたちになるわけです。
復縁を働きかけやすい
日本には離婚届が受理されるだけで離婚が成立する「協議離婚制度」があるので、勢いで離婚してしまうケースが少なくありません。
でも、勢いでも何でも離婚すると他人同士となり、別居すると関係性も希薄になって復縁しにくい状況に陥ります。
離婚後も同居していれば、日常生活の中で自然に関係が改善されることもありますし、折を見て復縁を切り出すことも可能です。
復縁目的の離婚後同居は多い
実務上、復縁目的で離婚後同居を継続している人はたくさんいます。
「勢いで離婚したが、復縁したい。現在も同居しているが可能か」といった相談は多いのです。
夫婦別姓が実現できる
近年、夫婦別姓を求める声が高まっており、夫婦になる意思を持ちながら夫婦別姓のために事実婚を選択する男女が増加しています。
中には、婚姻中の夫婦が夫婦別姓を求めて離婚し、離婚後同居を続けるケースもあります。
離婚後同居のデメリット
離婚後同居のデメリットも確認していきましょう。
ひとり親家庭(母子家庭、父子家庭)とみなされない
離婚した事実は戸籍で確認できますが、離婚後同居を継続しているとひとり親家庭とみなされません。
どういう影響があるか。
ひとり親家庭を対象とした次の各種制度を利用できなくなることがあります。
- 児童扶養手当(母子手当)
- 母子家庭の住宅手当(家賃補助)
- 母子生活支援施設への入所
- ひとり親家庭医療費助成
- 国民健康保険料の減免
- 国民年金保険料の免除
- 母子家庭自立支援給付金制度
- 寡婦控除(寡夫控除)など
いずれも離婚後の経済的困窮を免れるために役立つ制度で、利用できないと日常生活に大きな支障が及びます。
事実婚とみなされるおそれがある
離婚後同居が単なる同居(同棲)の場合でも、同居の期間が長くなると事実婚とみなされる可能性があります。
事実婚とみなされると、法律婚と同じく相手に対する扶養義務が生じます。
関係を解消するときには財産分与なども必要です。
復縁する意思がなくいずれは同居を解消したいと思っているなら、長期の同居は避けるべきでしょう。
単なる同居(同棲)の場合はストレスが溜まる
離婚後同居のメリットのためとはいえ、離婚するほどに関係が悪化した相手と単なる同居(同棲)を継続しているとストレスが溜まります。
特に、やむを得ない事情で同居を継続している場合、相手の些細な言動や態度も不快に感じて精神的に参ってしまいます。
離婚後同居と婚姻費用分担(生活費)
婚姻中の夫婦には婚姻費用分担義務が課されます。
同じ義務が離婚後同居中の元夫婦に課されるか否かは、同居の態様によって異なります。
単なる同居(同棲)の場合の婚姻費用分担
婚姻中の夫婦には互いに相手を扶養する義務(民法第752条)があります。
そしてそれを現実に履行する義務として、婚姻費用分担義務が課されています。
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
引用:民法第760条
条文の「夫婦」とは法律婚の夫婦のことでです。
離婚して単なる同居(同棲)状態になった元夫婦は当てはまりません。
つまり、離婚後に何らかの事情で同居していたとしても、事実上生活費を分担し合うことはできますが、互いに婚姻費用を分担する義務はありません。
したがって、相手に婚姻費用分担を請求することはできません。
離婚時に扶養的財産分与を取り決めた場合
例外として、財産分与で「離婚後に金銭を支払う」と取り決めた場合は、取り決めの範囲内で生活費を請求することができます。
例えば、次のようなケースが考えられます。
- 扶養的財産分与として離婚後に生活苦に陥ると予想される夫婦の一方が経済的に自立するまで生活費を支援する約束をする
- 離婚時の一時金として幾許かの金銭を支払う約束をする
取り決めが守られない場合、公正証書で離婚協議書を作成した場合は強制執行を利用します。
離婚調停や離婚訴訟をした場合は、履行勧告・履行命令・強制執行を利用して支払いの催促や強制ができます。
ただし、あくまで離婚時の取り決めに基づいて請求できるのであって、婚姻費用分担義務に基づいて請求できるのではありません。
事実婚(内縁)の場合の婚姻費用分担
離婚後同居が事実婚(内縁)とみなされる場合は、婚姻費用分担義務が発生して分担を請求できることがあります。
ただし、外見上は単なる同居なのか事実婚なのか分かりづらいです。
- 離婚後同居を一定期間以上継続する
- 離婚前と変わらない夫婦関係を維持する
こうした単なる同居とは異なる関係にあることを示す必要があります。
離婚後同居と世帯分離
離婚後同居のデメリットとして、ひとり親家庭として扱われず各種支援が受けられなくなる可能性があることを挙げました。
それというのも、ひとり親家庭向けの制度には世帯の所得制限を設けているものが多いからです。
世帯とは
世帯とは、「住居及び生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し、 若しくは独立して生計を営む単身者(厚生労働省ホームページより引用)」です。
世帯は、税金、健康保険料、生活保護などを決める基準単位で、住民票も世帯ごとに編成されています。
ひとり親家庭向けの支援制度の多くは世帯の所得制限を設けており、一定額以上の所得があると利用できません。
離婚後同居を継続しながら支援制度を利用したいなら、世帯分離を検討することになります。
世帯分離とは
世帯分離とは、同居を維持しながら住民票の世帯を分けることです。
世帯分離をすると、税金や健康保険料などが分離後の世帯ごとに計算されるので、税金や保険料などが安くなります。
また、世帯収入が下がり、ひとり親家庭向け支援制度の世帯所得制限に引っかかりにくくなります。
離婚後同居と世帯分離
離婚後同居中の元夫婦が世帯分離するメリットとデメリットをまとめました。
項目 | 説明 |
メリット | ・世帯所得が低くなり、支援制度の所得制限に引っかかりにくくなる
・保険料が安くなることがある ・税金が減免されることがある |
デメリット | ・保険料のうち世帯ごとにかかる部分を2重に支払うことになる(約1万円/月)
・生計を共にしている場合は認められない |
離婚後同居と扶養
離婚後も同居を継続する場合、扶養の問題も生じます。
夫婦の一方の所得が少ない場合、扶養に入れば保険が配偶者の社会保険でまかなわれ、扶養控除が適用されて税金も安くなります。
国民健康保険に加入して保険料を支払わずに済みますし、所得税や住民税なども控除によって安く済みます。
でもこれ、結婚している間の話です。
離婚すると扶養義務がなくなるので、原則として扶養から外れます。
元配偶者の扶養に入り続ける方法
元配偶者の扶養に入り続けるには、離婚後同居が単なる同居ではなく事実婚(内縁)関係であることを勤務先などに示す必要があります。
離婚後同居が事実婚(内縁)であると認められるためには、一定期間以上の同居継続に加えて婚姻中と変わらない夫婦共同生活を続けることが必要です。
例えば、生計を共にして生活費を分担する、財産を共有する、家事育児を分担する、互いの家族や親族との交流を維持するなどが考えられます。
事実婚(内縁)が認められると、扶養資格が「夫または妻」から「内縁の夫または妻」に変更され、扶養に入り続けることができます。
子供の扶養
子供は、離婚後同居中は当然に扶養に入れることができます。
離婚により、夫婦は他人になって扶養義務が消滅しますが、親の子に対する扶養義務は残るからです。
離婚後同居を解消して子供と別居した場合は、扶養から外すことになります。
離婚後同居と児童扶養手当(母子手当):同居はバレる?
児童扶養手当(母子手当)とは、ひとり親家庭で子供を育てている低所得の養育者に支給される手当です。
ひとり親家庭に対する経済的支援の代表的な制度で、2019年度の支給額は以下のとおりです。
子供の人数 | 全額支給(月額) | 一部支給(月額) |
1人 | 42,910円 | 42,900円~10,120円 |
2人 | 53,050円 | 53,030円~15,190円 |
3人 | 59,130円 | 59,100円~18,230円 |
父母が離婚していても、婚姻中と大差ない生活実態が維持されている(事実婚関係にある)場合、ひとり親家庭とはみなされず支給対象外となります。
したがって、離婚後同居中に扶養に入るには事実婚関係を主張する必要がありますが、事実婚関係が認められると児童扶養手当は受給できません。
扶養に入るために勤務先には事実婚であると主張し、児童扶養手当受給のために市区町村役場には単なる同居であると主張した場合、不正受給となります。
離婚後同居中の母子手当受給はバレる?
結論から言うと、不正受給をすれば高い確率でバレます。
「壁に耳あり障子に目あり」ということわざがありますが、行政の情報収集は驚くほど早く正確です。
離婚後同居していることはもちろん、元配偶者の扶養に入っているかどうかも把握しています。
「バレないようにやろう」という考え方は非常にリスクが高いです。
扶養と児童扶養手当は両立できない
ここまで書いてきたことをまとめると、離婚後同居中でも、元配偶者の扶養に入ったり、児童扶養手当を受給したりできることはあります。
でも、扶養に入ることと母子手当の受給はどちらか一方だけです。
扶養に入るには事実婚関係を証明する必要がありますが、事実婚関係が認められると母子手当を受給できないからです。
その他にも、ある制度を利用すると別の制度が利用できなくなることがあるので、事前に確認しておきましょう。
離婚後同居のまとめ
離婚後同居と聞くと、「なんで離婚したのに一緒に生活するの」と疑問に思う人が多いです。
でも、住む場所の確保、生活費の抑制、子供への影響を抑えることなどメリットが多いんです。
実際のところ、離婚した相手と同居を継続している男女は増えています。
当然、離婚するほど関係が悪化しているので問題が生じることはありますが、それを上回るメリットがあります。
ただし、ひとり親家庭とみなされなず支援制度が利用できなかったり、世帯分離などの手続きが必要になったりするデメリットもあります。
そのため、離婚する前に離婚後同居するかどうかを慎重に検討し、配偶者とも話し合っておくことが大切です。